頑固で義理堅いと言われることもある熊本県民ですが、葬儀には独特の風習があります。例えば「夜伽見舞い」です。これは遺族に渡すお菓子や缶詰、お酒のことで、香典とは別に包みます。遺族は通夜の後に、故人を偲びながら頂いたお菓子などを食べて過ごし、余った分は関係者たちに振る舞います。
そして夜伽見舞いをいただいた場合は、香典返しも多めにする習慣です。その他、出棺する時に、故人が使っていた茶碗を割る風習があります。これは「茶碗割り」と呼ばれており、この世にはもうあなたが帰ってくる場所はないですよ、と伝える意味合いがあります。
また、出棺時に棺を3回ほど回す風習も見られます。「棺回し」と呼ばれるものですが、故人の方向感覚を狂わせ、家に戻ってくることのないようにという意味があります。故人が、あの世に迷いなく旅立つことを祈って行うという説もあります。
熊本県内でも都市部の方では、日本全国がその流れに乗っているのと同じく、家族や親族だけで行う小さなお葬式が選ばれています。祭壇を自宅に作るのではなく、葬儀会館を借りて行われることがほとんどです。親と子の世帯が別々であることが当たり前になった今、親世帯にある物を使ってお葬式の支度をするのは、どこに何があるのかがわからないため、手間と時間が余計にかかってしまいます。
それなら、お金はかかっても貸してもらった方がうんとスムーズに進むという考えから、結果的葬儀会館でのお葬式ということになります。親族だけで行うという選択も、その方が気疲れの度合いが軽くて済むというのが主な理由であり、なかには仕事や学校でどうしても参列できない人がいても、親族だけなら、まあいいじゃないかということにしやすいというのも影響していると思われます。